[轉貼] Tokyo Headline 最終回

[ranko]

2004年春公開の劇場映画「ドラえもん.のび太のワンニャン時空伝」のアフレコに参加して来ました。私はこの度「イチ」という犬の少年を演じます。どこかでポスターなどを見かけたら、のび太君と向かい合わせになっているキャラクターが私です。
　ゲストも豪華に泉谷しげるさんと、島谷ひとみさんを迎え、都内のスタジオで丸2日かけてアフレコが行われました。たいてい業界違いの方は｢抜き録り｣といって、別日にその方だけ、録音したりするのですが、今回は、全員一緒にスタジオ入りでした。お二人とも、慣れないアフレコに四苦八苦しながらも、さすがの貫禄で、キャラクターに命を吹き込んでいました。泉谷さんに至っては、まさに泉谷節大爆発。アフレコという作業は出来上がった絵や、口にあわせてセリフを言わなくてはいけないのですが、「なんだよ、俺に断りなく絵作ってんじゃねーよ」やら、ランプがついている間しゃべる合図のキューに「なんだよ、ランプがつく前に断れ！」だの。もちろん冗談まじりに、スタジオを笑わせて下さいました。そしてさらに、ドラえもん役の大山のぶ代さんや、のび太役の小原乃梨子さんと一緒にテレビ創世記時代の話や、洋画のアフレコが「生放送」だった頃の話など、お昼時の話題はそれはそれはにぎやかなものでした。
　今はレコーディングでもアフレコでも「パンチイン」といって、うまくいかなかった所だけを録りなおす、なんてあたりまえな作業ですが、生はそうは行かない…。間違えたら、間違えたまま放送されてしまいます。途中でトイレに立ってしまった人の役を変わりに別の人があてた…、とか…。一本のマイクで入れ替わり、立ち代りの西部劇!? もう、何をどうやったら、それが放送に乗るものになっていたのか、想像すらつかないほどです。その後「録音」という技術が出来、いくらかは楽になったとはいえ、ＣＭまでの15分はいっきに録音。最後の一言を間違えたら、また頭から全て取り直し。しかも全員。連帯責任がどうこうの問題じゃないですよ。ただただ絶句です。そりゃまあ、昔は楽器だって、歌だって、「せーの」で録音だったんですけど…ねえ。いや、しかし、その時代をへてなを、現役で、しかも一線で活躍しているパワーは本当にスゴイの一言です。
　そして、さらにパワー話は続きます。今回私は妊娠6ヵ月のお腹でアフレコ参加だったわけですが、皆さんそれぞれ、自分の「あの頃」を思い出しつつ、そりゃあもう、どんな妊婦雑誌より為になる？ワイルドな話が飛び交いました。「あの頃は抜き録りなんてなかったからねえ…、私は滝のように吐きながらもスタジオに通ったわよ、おほほほほほ」（滝って…）だの「私は妊娠7ヶ月まではお酒ガバガバ飲んでたわ、お陰で息子は酒豪よ」（いいんすか？）だの「いろーんな人を見てきたけど、たいてい妊娠すると、お腹が上がって、肺を頼るようになるから、声が上に上がってきちゃうけど、あなたはちゃんと下の方から声が出てるみたいだから、きっとギリギリまで仕事できるわよ」（ギリギリ…か…あ…ありがたい）など。どちらかといえば、世の雑誌や書籍は、妊婦はいたわるもの的に書かれておりますが、とんでもない。私の仕事場ってこういう所なんだなあ、っと頼もしく、ありがたく、痛感したのでした。
　今は、技術的にも、もちろん精神的にも、優しさと甘えがとっても紙一重です。「すみません」で許されなかった世界…。その痛みを知っていたり、経験しているからこそ、他人にも自分にも厳しく、そしてその厳しさは、出来あがる作品達になにより反映している気がします。いやあ、まだまだ遠いなああ。
今回で最終回です「ご愛読いただきありがとうございました」 TOKYO HEADLINEはここにある！